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1.研究概要

 循環器学分野は、不整脈や心不全、虚血性心疾患の基礎的な研究や臨床研究、さらに、老化制御を目指した基礎・臨床研究も行っている。再生医療と不整脈の分野では、基礎的なデータを臨床に応用するトランスレーショナルリサーチも推進している。

2.研究グループ

  • 老化制御研究グループ
  • 不整脈研究グループ
  • 心不全研究グループ
  • 虚血・再生研究グループ

3-1.老化制御研究グループ

研究テーマ

・心血管系・代謝系の老化のメカニズム解明に関する研究
・老化からみた新しい生活習慣病治療の開発に関する研究
・個体寿命制御のメカニズム解明に関する研究
・老化・長寿モデルマウスの確立に関する研究 ヒト長寿研究

3-2.不整脈研究グループ

研究テーマ

・不整脈発症に関与する遺伝的背景の研究
・遺伝子情報に基づく不整脈の個別化医療の研究
・不整脈を発症する新たな危険因子の同定とリスク層別化の確立
・遺伝性不整脈の不整脈発症の機序の解明
・J波およびT波の成因と不整脈発症の機序の解明
・心室細動の発症機序および維持機構の解明と解剖学的因子を標的とした新たな心室細動アブレーションの開発
・光学マッピング法を用いた各種不整脈の発症様式、維持機構(不整脈器質)の解明
・重症心不全患者に対する心室多点ペーシング療法
・完全皮下植込み型ICD(S-ICD)および従来型ICDの適応・管理・サポートに関する包括的検討
・生理的凝固阻止因子および炎症・老化の抗凝固療法に与える影響の解明
・心原性脳塞栓症、全身性塞栓症の2次予防における心房細動アブレーションの有効性に関する多施設共同研究
・糖尿病治療薬(SGLT-2阻害薬)の心臓突然死予防効果に関する多施設共同臨床試験(EMPA-ICD study)

3-3.心不全研究グループ

研究テーマ

・動物モデルを用いた心不全の原因、機序、治療に関する研究
・心不全と免疫、炎症の関わりについての研究
・心不全疾患の遺伝子解析
・心不全と鉄代謝に関する研究
・交互脈の機序に関する研究
・心不全の予後改善を目指した基礎・臨床研究

3-4.虚血・再生研究グループ

研究テーマ

・体外増幅自己赤芽球移植を用いた血管新生治療
・心筋梗塞患者に対するエポエチンベータ投与による心機能改善効果に関する研究-II(EPO/AMI-II)
・虚血性心疾患の予後改善を目指した基礎・臨床研究
・虚血性心疾患の重症度を評価するバイオマーカーの開発

循環器内科ホームページ

4.研究の成果

[分野] 循環器学(老化制御研究)

[研究テーマ] 心血管系・代謝系の老化のメカニズム解明に関する研究

[内容]
 加齢に伴って、糖尿病や動脈硬化などの生活習慣病の罹患率が増加する。これらの疾患は、多くの高齢者において共通に認められることから、老化の形質の一部として捉えることができる。すなわち、これらの疾患の究極的な治療のターゲットは、寿命を調節する仕組みそのものかもしれない。
 通常ヒト正常体細胞は、ある一定回数の分裂増殖後、細胞老化とよばれる分裂停止状態となる。老化した細胞が高齢者の組織へ集積すること、早老症候群患者より得られた細胞の寿命は有意に短いことなどが報告されていることから、加齢に伴って生じる組織における細胞老化シグナルの活性化が、寿命や加齢関連疾患の病態生理に関与する可能性がある。実際我々は、このような細胞老化シグナルが加齢や過食などのストレスによって、組織(血管・心臓・脂肪など)において活性化され、それらのシグナルがネットワークを形成することによって互いに作用し、加齢関連疾患の病態に関与していることを明らかにしてきた。今後はこれらを標的とした新たな治療法の開発に挑む。

[写真など]

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[分野] 循環器学(不整脈研究)

[研究テーマ]不整脈の遺伝的背景と機序解明ならびに個別化医療の確立

[内容]
 我が国では年間約5万件の心臓突然死が発生すると推定されており、その主な原因は重症致死性不整脈であると考えられている。当科では臨床診療に加えて、不整脈症例の臨床的な特徴の解明や新たな治療法の開発のための臨床研究にも力を入れている。具体的には、不整脈の遺伝子検査の手法を用いて不整脈症候群の遺伝的な背景を解明するとともに、新たな原因遺伝子を検索している。最近では次世代シークエンス法を応用した新たな遺伝子スクリーニングアッセイを構築した。また、重症不整脈の発症に関与するとされているJ波およびT波の成因と異常発生の機序についても、心筋層内の電位の記録が可能な独自の装置を用いて検討を行い報告してきている。さらに、最重症の不整脈である心室細動の発生と維持に関わる解剖学的因子を標的とした心室細動アブレーションの開発を目指し海外の施設との共同研究も進めている。

[写真など]

図

心房細動症例では脳塞栓症の予防が臨床上極めて重要であり、一定以上の危険性があると判断される症例では抗凝固療法による塞栓症の予防が行われる。当科においては、生理的凝固阻止因子・炎症・老化などが抗凝固療法に与える影響の解明を目指した臨床研究を進めている。また、心房細動による塞栓症の二次予防における心房細動アブレーション治療の有効性を検討するための多施設前向き研究を開始し症例の蓄積を進めている。さらに、基礎的な研究として、これまで技術的に困難が多いとされてきた小動物(マウス等)の心房を対象とした光学マッピング法の確立を目指して、高感度高速度カメラの導入を予定している。これにより、遺伝子改変動物を用いた心房細動の発症及び維持機構(不整脈器質)に関する検討が可能となり、老化や生活習慣と心房細動発症の関連について新たな知見が得られると期待される。
 糖尿病治療薬であるナトリウム・グルコース共役輸送体(SGLT)阻害薬は良好な心血管死の予防効果を持つことが示されている。当科では植込み型除細動器症例において、SGLT-2阻害薬が心室頻拍/細動の再発抑制効果を有するかを検討する、医師主導多施設共同前向き研究(EMPA-ICD study)の準備を進めている。
 これらの方法で明らかとした不整脈の遺伝子情報やメカニズム、新しい治療法は臨床診療にフィードバックし、個々の症例の遺伝的背景や不整脈のメカニズムに基づく個別化療法の確立に繋げることを最終的な目標としている。このように当科では臨床情報から基礎的な検討を行い、その結果を再び症例へ還元する”症例ベースの双方向性トランスレーショナルリサーチ”を行っている。

[分野] 循環器学(心不全研究)

[研究テーマ] 心不全の原因と増悪因子に関する研究

[内容]
 我が国の心不全患者数は、推定約140万人とされ、今後高齢化によって益々増加するといわれている。 心不全の原因は、虚血性心疾患、高血圧、心筋症、心筋炎、弁膜症、先天性心疾患、不整脈、心膜疾患、肺動脈性肺高血圧症などがあり、また心不全増悪因子も貧血、睡眠時無呼吸、腎不全など多岐に渡っているため、様々な因子を考慮して、診断および治療をする必要がある。
 当科では、動物モデルを用いた解析や遺伝子診断などを通して、心不全診療で得た様々な疑問に答えるべく研究をしている。 特に、心不全と免疫や炎症との関与については、様々な知見を報告してきた。近年、心不全と炎症の関わりは、重要性を益々認識されつつあるが、炎症に直接関わるT細胞、樹状細胞、マクロファージ、サイトカインなどは、心臓自体の傷害に関与するだけでなく、全身に様々な影響を与え、心不全の原因、増悪因子に深く関わっているとされる。 一方、遺伝子異常による心筋症が近年次々に明らかになっているが、当科でも遺伝子解析を積極的に行い、その解明に寄与し、心不全の原因に即した根本的な治療を目指すべく研究をしている。 さらに、貧血、睡眠時無呼吸など、心不全の増悪に関わる様々な因子を明らかにし、全身的な観点から心不全を研究し、臨床の新しい治療に役立てたいと考えている。

[写真など]

図

[分野] 循環器学(虚血・再生研究)

[研究テーマ] 体外増幅自己赤芽球移植を用いた血管新生治療(EVEETA study)

[内容]
 当施設では「重症下肢虚血に対する骨髄単核細胞移植による血管新生治療(BMI)」が先進医療として認可されている。 しかし症例数を重ねるにつれ、患者に対する侵襲が大きい、患者からは良好な骨髄が採取されない等の理由で動物モデル治療実験に比し低い治療効果しか得られないことが明らかとなった。
そこで新たな血管新生治療として体外増幅自己赤芽球移植による血管新生治療の開発を計画した。基礎的な検証の結果、骨髄細胞のうちVEGF, PLGF等の血管新生因子を分泌しているのは主に赤芽球、なかでも前赤芽球から好塩基性赤芽球であることがわかった。 そこで、これら未熟な赤芽球を体外培養で大量に入手するための培養法開発を行った。その結果、TPO等3種の造血因子の存在下で7日間培養(1次培養)することで赤血球前駆細胞が増幅され、さらにこれをEPO等3種の造血因子の存在下で7日間培養(2次培養)することで、大量の未熟赤芽球が収穫されることがわかった。 マウス下肢虚血モデルを用いた検討では、本培養法での血管新生効果は従来法のBMIの10倍の治療効果を示すほど強力であった。
 平成18年5月に当施設に設置の倫理委員会および臨床研究審査委員会から当該第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験の認可を受け、体外増幅自己赤芽球移植による血管新生治療(Ex-Vivo Expanded Erythroblast Transplantation(Autologous)(EVEETA study)の第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験を開始した(ISRCTN66803682)。 これまで11例の末梢血管疾患患者に対してEVEETA治療を施行し、すみやかな下肢痛の軽減及び消失、難治性皮膚潰瘍の縮小、局所組織酸素分圧や皮膚灌流圧の上昇など非常に良好な結果を得ている。

[写真など]

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