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1.研究概要

 臨床病理学分野は、人体材料を用いた消化器病理を中心に研究を行っている.形態学的分析に免疫組織学的,分子生物学的手法を加えて研究を進めている

2.研究対象臓器

  • 大腸
  • 食道
  • 肝胆膵

3-1.大腸研究テーマ

  • 炎症性発癌病変の病理学的特徴と発癌メカニズム
  • 潰瘍性大腸炎の癌化サーベイランスに関する国内共同研究
  • 大腸癌の組織発生と発育進展様式およびそれに関わる分子メカニズム
  • 大腸癌の悪性度診断

3-2.胃研究テーマ

  • ピロリ菌除菌後早期胃癌の病理組織学的分析
  • 胃分化型腺癌における形質発現の検討
  • 胃腺癌におけるAMACR発現
  • 胃内分泌腫瘍におけるAMACR発現
  • 胃内分泌腫瘍における粘液形質発現
  • 早期胃癌におけるNBIと病理組織立体構築像との対比

3-3.食道研究テーマ

  • 食道扁平上皮粘膜内腫瘍の病理組織学的・分子病理学的解析
  • 食道扁平上皮癌早期病変のp53遺伝子変異
  • 食道胃接合部粘膜の組織学的特徴と粘液形質
  • Barrett食道の発生と進展
  • Barrett食道腺癌の粘液形質分布

3-4.肝胆膵研究テーマ

  • 肝細胞癌の肝内進展様式
  • 胆道癌の組織発生と発育進展様式
  • 胆嚢癌の発生に関わる遺伝子異常についての国際共同研究

4.研究の成果

[分野] 臨床病理学(大腸)

[研究テーマ] 炎症性発癌病変の病理学的特徴と発癌メカニズム

[内容]
長期経過の炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)では、大腸癌が好発し、これらは炎症性発癌と呼ばれている。当教室では、潰瘍性大腸炎(UC)を中心として、発癌早期病変の病理学的特徴および発癌メカニズムについての研究を行っており、以下の諸点を明らかにしてきた。
 @UCに発生する大腸癌は、通常の大腸癌とは異なる組織学的特徴を示す:低分化・印環細胞癌・粘液癌などの頻度が高い、粘膜内で脱分化傾向を示すものがある、粘膜下層以深では浸潤性発育を示すものが多い。A肉眼的にも平坦で周囲粘膜との境界が不明瞭であり、内視鏡的発見が容易でないものが多い。B発癌早期病変(粘膜内腫瘍)も通常の大腸腫瘍に比べ、表層分化、細胞分化異常等の特徴的組織所見を示す。C発癌早期病変では、通常の大腸腫瘍にみられる増殖帯の逆転現象(正常の大腸陰窩では増殖帯が粘膜深部に存在するが、腫瘍では増殖帯が粘膜表層優位に存在)が起きていない。C発癌早期から、p53遺伝子異常が関与している。D炎症性発癌病変およびその背景粘膜には、腸型から胃型への細胞粘液形質転換が起きている。E炎症性発癌病変やその背景粘膜では、DNA損傷(二重鎖切断)が高頻度にみられる。
 近年、日本でも炎症性腸疾患の罹患頻度が増加している。それに伴い炎症性腸疾患長期経過例が蓄積され、炎症性発癌病変の早期発見やその的確な病理診断および早期発見のためのバイオマーカーの開発が必要となっている。本研究は、こうした臨床的ニーズに対応する上でも重要な課題である。

[写真など]

図

[分野] 臨床病理学(胃)

[研究テーマ] 消化管内分泌腫瘍

[内容]
 消化管に発生する内分泌腫瘍は、カルチノイドと内分泌細胞癌とに大別される.両者は形態や生物学的悪性度のみならず、組織発生も異なる.【西倉健他.胃と腸35: 1349-1354, 2000】
 カルチノイドの大半は筋層浸潤せず転移もしないが,内分泌細胞癌は早期段階から高率に転移する.また,各腫瘍間(カルチノイド,異型カルチノイド,内分泌細胞癌)で細胞増殖能は有意に異なる(カルチノイド<異型カルチノイド≪内分泌細胞癌).【西倉健他.臨床消化器内科 21; 1399 -1408, 2006】
 カルチノイドの組織発生(A型胃炎例):胃底腺萎縮に伴う胃酸分泌低下に対して高ガストリン血症が続発し,(ガストリンのtrophic作用により)腺窩以内の内分泌細胞過形成が生じ,更に腺管外ECM形成が起こり,これらが腫瘍化しカルチノイド形成に至る.【Itsuno M, et al. Cancer 63: 881-890, 1989】.
 内分泌細胞癌の組織発生:カルチノイドからの移行は稀であり,先行発生した腺癌内の腫瘍性内分泌細胞を母地として内分泌細胞癌が発生する.その根拠@内分泌細胞癌とカルチノイド腫瘍との共存はごく稀.A早期内分泌細胞癌の78%(14/18),進行内分泌細胞癌の63%(27/43)に腺癌(高〜中分化)が合併.B内分泌細胞癌に合併する腺癌の大半は粘膜内腺癌で,内分泌細胞癌部分が腺癌から連続進展している症例が78%(32/41).C腺癌領域と内分泌細胞癌領域との間の,高頻度の共通p53変異パターン【岩渕三哉他.癌臨 29: 92-93, 1983】【Nishikura K, et al. Gastric Cancer 6: 203-209, 2003】

[図表]

図

[分野] 臨床病理学(食道)

[研究テーマ] 食道扁平上皮癌早期病変のp53遺伝子変異

[内容]
 食道扁平上皮癌は異形成と呼ばれる異型扁平上皮を前癌病変とし,それが上皮内癌(CIS)を経て浸潤癌に進行すると考えられている.異形成は軽度(LGD)と高度(HGD)に大別されるが,そのいずれが食道扁平上皮の発癌早期段階かは明かではない.このことを明らかにするため食道扁平上皮癌で高頻度にみられるp53遺伝子異常に着目し,扁平上皮癌とそれに併存する上皮内腫瘍(LGD, HGD, CIS)のp53遺伝子変異および同蛋白過剰発現を検討した.内視鏡的摘除食道扁平上皮癌10例(粘膜固有層浸潤癌:M癌4例,粘膜下層浸潤癌:SM癌6例)を対象とし,LGD, HGD, CIS, M癌部, SM癌部別にp53免疫染色を評価し,同遺伝子変異を検索した.p53遺伝子変異はLGDの83%,HGDの50%, CISの71%,浸潤癌部の50〜75%に認められた.LGDとHGDでは,1例を除き,同一病変内に併存するCISおよび浸潤癌部と変異コドンが共通するか,もしくは両者ともwild typeであった.これらのことから,LGDおよびHGDは同一病変内のCISや浸潤癌部と組織発生学的連続性があることが推定された.同一病変内のCISと浸潤癌部では遺伝子変異は単一の変異コドンに生じていたが,LGDとHGDでは変異コドンに多様性(複数の変異コドンが存在)がみられた.LGDとHGDは異なるp53遺伝子変異を持つ複数の細胞集団から構成され,それらがクローン選択を経て均一なp53遺伝子変異パターンを持つCISとなり,粘膜固有層へ浸潤すると考えられた.本研究結果から,LGDの段階で既にCISや浸潤癌と共通するp53遺伝子変異を来した細胞集団が含まれていることが推定され,LGDを食道扁平上皮の発癌早期段階とし位置づけることが可能であり,LGDに対しては積極的な臨床対応が必要と考えられた.【坪井清孝. 新潟医学会雑誌124: 627-637, 2010】

[図表]

図

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