新潟大学医学部医学科

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平成29年04月14日

No_57 神経生化学分野 五十嵐道弘教授の論文発表が Journal of Neuroscience の表紙に採用されました

医学科HPに3月23日付掲載のプレスリリース論文(Honda A et al.: Journal of Neuroscience 37(15): 4046-4064)が、掲載号(2017年4月12日号)の表紙に採用されました。
 
当該の写真(下図)は、医学科共通機器の超解像度顕微鏡(SIM)を用いて撮影されたものです。
 
詳しい説明はhttp://www.jneurosci.org/を参照願います。
 

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連絡先
神経生化学(生化学第二)
五十嵐道弘 教授
e-mail:tarokaja@med.niigata-u.ac.jp

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平成29年03月23日

No_56 神経細胞での脂質ラフトを介した新たなシグナル伝達制御を発見 −うつ病やアルツハイマー病,BSE,HIV脳症などの研究に貢献−

本学医歯学総合研究科 五十嵐道弘教授、本多敦子特任助教、伊藤泰行助教らの研究グループは、神経細胞表面においてGPM6aタンパク質がトランスデューサー(シグナル変換器)*¹として作用し、細胞外から細胞内へのシグナル伝達*¹を、脂質ラフト*²を介して制御する機構を世界で初めて発見しました。
 
この発見は、細胞外基質*³のシグナルに応じた神経細胞極性*⁴の決定制御機構を明らかにしただけでなく、うつ病、アルツハイマー病、BSE、HIV脳症などGPM6a発現低下が関係する疾患の研究への貢献が期待されます。本研究成果は、本学大学院医歯学総合研究科と愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所、愛知医科大学との共同研究によるもので、The Journal of Neuroscience(インパクトファクター 6.780)に2017年3月8日(水)(米国時間)オンライン速報版に掲載されました。
 
【本研究成果のポイント】
・神経の脂質ラフトにあるGPM6aタンパク質の局在化が、脂質ラフトと神経極性決定に関与する細胞内シグナル分子の集積を誘導し、脂質ラフトにおけるシグナル伝達を制御することを発見。
・GPM6aタンパク質が、細胞外基質ラミニンの刺激に応じて細胞表面でのシグナル変換器(トランスデューサー)として作用し、ラフトを介してシグナル伝達の増強することで、素早い神経極性決定を誘導することを明らかにした。
・GPM6タンパク質発現の抑制は、脳内での神経発生に重要な神経極性決定を停滞させたことから、GPM6aの発現量の低下が、ストレスやウイルス感染に伴う神経疾患の発症機序に関係していると考えられる。
 
Ⅰ.研究の背景
脂質ラフト(ラフト)は、主に糖脂質とコレステロールから構成される細胞膜上の微小膜領域で、シグナル分子が集積するシグナル伝達の場として大事な役割を持ちます。またラフトは、疾患や細菌・ウイルス感染などにも深く関係し、様々な細胞においてその重要性が示されていますが、脳の神経細胞ではラフトの具体的な役割は殆ど分かっていません。一方、神経細胞はこれらの脂質が他の細胞に比べて圧倒的に大量に存在するため、ラフトの重要性も非常に高いものと考えられます。
 
神経細胞は、脳における精密な回路形成や情報の伝達のため、軸索とよばれる一本の長い突起と樹状突起とよばれる短い多数の突起を形成します(図1)。この神経極性決定も、細胞表面における細胞外からのシグナル伝達により制御されるはずですが、未解明のままでした。
 

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Ⅱ.研究の概要
神経細胞の細胞表面におけるシグナル伝達の制御メカニズムを明らかにするため、本研究チームは、以前、成長円錐(軸索形成に重要な先端部)で最も多く発現する膜タンパク質の1つとして同定したGPM6aに注目しました(Nozumi, Honda, Igarashi ら, PNAS, 2009)。
 
GPM6aは細胞膜で、ラフトに局在することを発見しました。GPM6aのラフトにおける局在と、ラフト自体の位置関係を調べたところ、正常なGPM6aは、自身が局在化する神経突起の先端にラフトを密集させましたが、ラフトに局在化できない変異型のGPM6aは、その集合を引起こさず、GPM6a局在が細胞表面のラフトの集合を作り出すことがわかりました。
 
また細胞外基質タンパク質の1つであるラミニンのシグナルが、GPM6aの偏った局在を作ることが分かりました。GPM6aが局在化した神経細胞では、ラフトがGPM6aと同様の、偏った分布を示していました。一方で、GPM6aが欠損した神経細胞では、ラミニンのシグナルがあっても、ラフトの局在化ができず、細胞外のラミニンシグナルにより、GPM6aは細胞表面で偏って局在化し、ラフトの集積を引起こすことを証明できました(図2)。
 

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次に、GPM6aが細胞内で相互作用する分子を調べたところ、神経極性決定に関与するシグナル分子と複合体を形成することを見出しました。ラミニンシグナルによりGPM6aが局在化する際の、ラフトとシグナル分子群の分布を比較すると、両者がGPM6aと同様にラフトに集合しており、GPM6aの欠損した神経細胞では、ラフトもシグナル分子もそれぞれ細胞表面にバラバラに分布してしまうことが分かりました(図2)。
 
ラミニンのシグナルは、神経極性決定までの時間過程を著しく短縮し、GPM6aの欠損した神経細胞ではその作用が生じないことから、GPM6aがラフトと細胞内の神経極性決定シグナル分子の集積を引起こした結果、シグナル伝達の増強が生じて、速い神経極性の決定が誘導されることが明らかになりました。この結果は、マウス胎仔の脳内におけるGPM6aの発現の抑制が、脳神経細胞の神経極性決定を遅延させた結果(図3)と一致していました。
 

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Ⅲ.研究の成果
今回の結果は、GPM6aという分子による、神経細胞外から細胞内へのラフトを介した新たなシグナル伝達制御機構を明らかにしました。
 
本研究において、GPM6aは細胞表面上のトランスデューサーとして、細胞外のラミニンシグナルに応じて、ラフトを介して神経極性決定のシグナル伝達を制御し、非常にスピーディーな神経極性決定を誘導しました。
 
本研究での、マウス脳におけるGPM6aの発現阻害による神経極性決定の遅延の知見は、GPM6aによるシグナル伝達制御が脳形成において重要な役割を持つことを示すと共に、慢性ストレスやウイルス感染などによるGPM6aの発現抑制が、精神疾患や神経疾患を誘発する可能性を明らかにしました。
 
Ⅳ.今後の展開
今回発見した、GPM6aをトランスデューサーとした脂質ラフトを介したシグナル伝達の制御機構は、神経極性決定過程だけでなく、他のシグナル伝達過程にも多様に機能している可能性が高いため、ラフトを介した脳のシグナル伝達の制御機構解明の鍵となります。
 
GPM6a発現の抑制は、うつ病やアルツハイマー病、BSEやHIV脳症などの、精神疾患や神経疾患を発症した患者ではGPM6aの発現量が顕著に低下しています。従って、臨床医療においてGPM6a発現量の測定が、これら疾患の発症診断の指標(バイオマーカー)として活用できることが期待されるだけなく、これらの疾患でのGPM6aによるシグナル伝達を明らかにすることで、疾患の発症原因の解明や、治療法の開発に大きく寄与できます。
 
Ⅴ.研究成果の公表
これらの研究成果は、2017年3月8日(米国時間)のThe Journal of Neuroscience誌(IMPACT FACTOR 6.780)オンライン速報版に掲載されました。
http://www.jneurosci.org/content/early/2017/03/08/JNEUROSCI.3319-16.2017
 
論文タイトル:Extracellular Signals induce Glycoprotein M6a Clustering of Lipid-rafts and associated Signaling Molecules
著者:Atsuko Honda¹,², Yasuyuki Ito¹, Kazuko Takahashi-Niki¹, Natsuki Matsushita³, Motohiro Nozumi¹, Hidenori Tabata⁴, Kosei Takeuchi¹,³ and Michihiro Igarashi¹,²
1) Department of Neurochemistry and Molecular Cell Biology, Graduate School of Medical and Dental Sciences
2) Transdiciplinary Research Programs, Niigata University, Niigata 951-8510, Japan
3) Department of Medical Biology, Aichi Medical University, Nagakute, Aichi 480-1195, Japan
4) Department of Molecular Neurobiology, Institute for Developmental Research, Aichi Human Service Center, Aichi 480-0392, Japan
DOI:https://doi.org/10.1523/JNEUROSCI.3319-16.2017
 
用語説明
1. シグナル伝達・トランスデューサー:
細胞は、外部の環境・状況に対応するために、その情報(シグナル)を、シグナル分子とよばれる因子から因子へ次々に化学的に伝達しあうことで、自らの挙動を決定する。シグナル伝達の経路は大きく分けて、細胞表面において細胞外から細胞内へシグナルを伝達する過程と、細胞内でのシグナルの伝達過程の2つに分けられる。前者では、細胞外の物理的・化学的シグナルが、細胞表面のトランスデューサーにより、細胞内シグナル分子によるシグナルに変換されて伝達される。
 
2. 脂質ラフト:
マイクロドメインとも呼ばれる細胞の膜上の、流動性(流れ)の低い微小な領域のこと。細胞の膜は主に流動性が高い脂質から成っているが、この部分はコレステロールと糖脂質に富み、流動性が低い(流れが遅い)。ここにシグナル分子などの、膜のタンパク質が集積し、細胞表面でのシグナル伝達をはじめ、細胞接着や細胞極性[用語解説4神経極性参照]、細菌・ウイルス感染などにおいて重要な場として機能すると考えられている。膜全体を水面に例えた場合、そこに浮かぶ筏(ラフト)のイメージから、脂質ラフトと呼ばれる。
 
3. 細胞外基質:
生体内で細胞と細胞の間を埋める構造体で、細胞の機能や分化を制御する細胞外の微小環境である。実際には細胞外基質は単なる隙間ではなく、シグナル伝達分子やその受容に関する分子群が多数存在している場所である。細胞外基質のシグナルは、シグナル伝達により細胞外から細胞内に伝えられる。
 
4. 神経(細胞)極性:
細胞極性とは、細胞の持つ空間的な極性(偏り)の総称で、神経細胞は、精巧な脳神経回路の形成や情報の伝達をおこなうため、高度に発達した細胞極性を形成している。神経極性により、通常、神経細胞は1つの細胞体から一本の長い軸索と複数の樹状突起を形成し、樹状突起で他の神経細胞から情報を受取り、細胞体で情報を統合、軸索により次の細胞へと情報を出力することができる。
 
 
本件に関するお問い合わせ先
新潟大学大学院医歯学総合研究科
分子細胞機能学分野 五十嵐道弘 教授
e-mail:tarokaja@med.niigata-u.ac.jp

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平成29年03月14日

No_55 糖尿病性腎症の成因に基づく尿検査法を開発!−早期から予後を診断したり、治療法を見直すための新しい尿検査法−

【本研究成果のポイント】
・糖尿病に合併する腎障害(糖尿病性腎症)は透析導入の第1位の原因疾患であり、心・血管病の重要な危険因子でもある。
・糖尿病性腎症の成因に基づいて、その発症・進展リスクや治療の妥当性を評価できる検査法は今まで確立されていなかった。
・腎臓に発現するメガリンという分子が腎障害性物質(病的タンパク質など)を取り込む「入り口」となって、リソソームの代謝機能に負荷をかけ、その障害をきたすことが、糖尿病性腎症の発症・進展の起点となるが、その機序に関連して、エクソソームという微小構造物に搭載されて尿中にメガリンの排泄が増加することがわかった。
・エクソソームに搭載されるメガリン(全長型)の尿中排泄量を測定することで、早期から糖尿病性腎症の予後(発症・進展しやすさ)を診断したり、治療法に指針を与える可能性がある。
 
Ⅰ.研究の背景
現在我が国では腎不全によって約32万人の方々が透析療法を受けておられ、その数は年間約3万8千人ずつ増加しています。透析療法には年間約1兆5千億円もの医療費が投入されており、医療経済的にも重要な問題になっています(図1)。
 
糖尿病の合併症としての腎障害(糖尿病性腎症)は、透析導入原因疾患の第1位を占めています。また糖尿病患者は腎症を合併すると心臓病や脳卒中の危険も増大することが知られており、糖尿病性の発症・進展を食い止めることは、糖尿病治療における最重要課題のひとつです。
 
ただ、糖尿病性腎症の成因は未だ十分には解明されていません。しかし一方で、糖尿病性腎症が発症・進展しやすい人とそうではない人が存在することが知られています。しかしどのようにしてそのような人を見分けるかは明らかではありません。また腎臓を保護するために現在行われている治療が個々の患者にとって妥当なものかを評価する方法も確立されていません。そこで、糖尿病性腎症の成因に基づいて、その発症・進展のリスクを予測し、治療に指針を与えるとともに、簡便に行える検査法の開発が求められていました。
 
Ⅱ.研究の概要
新潟大学大学院医歯学総合研究科機能分子医学講座の斎藤 亮彦(さいとう あきひこ)特任教授を中心とする研究グループは、2015年に、肥満・メタボ型の糖尿病モデルマウスにおいて、腎臓の近位尿細管細胞に存在するメガリンという分子が「入り口」となって腎障害性タンパク質などを取り込むことにより、リソソームという細胞内小器官にタンパク質代謝負荷をきたし、その機能を障害させることを起点として、糖尿病性腎症が発症・進展する機序を明らかにしました。
 
このたび、そのようなリソソーム障害による糖尿病性腎症の発症・進展機序に伴って、メガリンがエクソソームという微小構造物に搭載されて腎臓から尿中への逸脱が増加すること、そして、そのメガリンを尿中で定量することが糖尿病性腎症の早期診断や予後予測に役立つ可能性があることを明らかにしました。
 
この尿中メガリン測定法は既に新潟大学とデンカ生研(株)が共同特許を取得しており、臨床での実用化に向けて研究を進めています。
 
Ⅲ.研究の成果
腎臓は約100万個のネフロンという構造体が集まってできています。ネフロンでは、糸球体というフィルターを通して、水分を含む血液由来の様々な成分が濾過され、尿細管の中を流れていく過程で、尿細管細胞で再吸収・代謝されたり、あるいは逆に尿細管細胞から様々な物質が分泌されて、最終的に尿が生成されます(図2)。
 
ネフロンの数は生まれた時に決まっており、尿細管の長さはおおおよそ20歳代まで伸びていきますが、それが腎臓の代謝機能を規定します。
 
メガリンは近位尿細管細胞に発現し、糸球体から濾過される様々な物質(タンパク質や薬剤など)を再吸収し、それらの代謝を促す受容体として機能しています(図2)。
 
斎藤特任教授らは、2015年に、高脂肪食を負荷した肥満・メタボ型の糖尿病モデルマウスにおいて、近位尿細管細胞のメガリンが「入り口」となって腎障害性タンパク質などを取り込むことにより、タンパク質の代謝負荷から細胞内のリソソーム障害をきたし、そのことが起点となって、糖尿病性腎症が発症・進展する機序を明らかにしました(図3)(Kuwahara S,et al. J Am Soc Nephrol)
 
このたび、斎藤特任教授を中心とする新潟大学の研究チームは、国立がん研究センター研究所とデンカ生研(株)と協力して、そのようなリソソーム負荷による糖尿病性腎症の発症・進展機序に伴って、メガリンがエクソソームという微小構造物に搭載されて腎臓から尿中への逸脱が増加することを明らかにしました(図4)。さらに、そのようなメガリンを尿中で定量することが、糖尿病性腎症の早期診断や予後予測に役立つ可能性を明らかにしました。
 
本研究においては、インドからの文部科学省国費留学生(新潟大学大学院医歯学総合研究科博士課程)のShankhajit De(シャンカジット デ)さんが主に実験を担当しました。
 
ネフロンの数が少ない、あるいは尿細管の長さが短い場合、糖尿病を罹患すると、それにかかる代謝負荷が増大し、糖尿病性腎症の発症・進展リスクが増大する可能性があります。また、一部のネフロンが障害されると残存するネフロンの負荷が増大し、さらにネフロン障害が進行するリスクが高まります。そのような場合、尿中メガリン測定値をクレアチニン値(機能ネフロン数を反映する)で除すことによって、単一ネフロン当たりの代謝負荷を評価することができます。
 
この検査法は、糖尿病性腎症以外にも、様々な慢性腎臓病について、重症度や予後の診断に役立つ可能性があります。
 
Ⅳ.今後の展開
尿中メガリン測定を組み込んだ臨床研究を行い、3-4年後を目処に尿中メガリン測定試薬の発売や、その後の薬事承認を目指します。
 
Ⅴ.研究成果の公表
これらの研究成果は、Diabetes誌(米国糖尿病学会誌)(インパクトファクター: 8.784)のオンライン版に平成29年3月13日23時(日本時間)に掲載されました。
 
論文タイトル:Exocytosis-Mediated Urinary Full-Length Megalin Excretion is Linked with the Pathogenesis of Diabetic Nephropathy
著者:Shankhajit De, Shoji Kuwahara, Michihiro Hosojima, Tomomi Ishikawa, Ryohei Kaseda, Piyali Sarkar, Yusuke Yoshioka, Hideyuki Kabasawa, Tomomichi Iida, Sawako Goto, Koji Toba, Yuki Higuchi, Yoshiki Suzuki, Masanori Hara, Hiroyuki Kurosawa, Ichiei Narita, Yoshiaki Hirayama, Takahiro Ochiya, Akihiko Saito
 
用語説明
メガリン:
近位尿細管細胞の管腔側膜に発現する分子。腎臓の他では肺、脳、内耳、眼などにも発現する。腎臓では、糸球体から濾過される様々な物質(タンパク質や薬剤など)を再吸収(エンドサイトーシス)し、それらの代謝を促す受容体として機能している。メガリンに結合した糸球体濾過分子は細胞内に取り込まれてエンドソームからリソソームに運ばれ、そこで分解されるが、メガリン自身は細胞膜にリサイクルする。エクソソームに搭載されて尿中に排出される。
 
リソソーム:
真核生物が持つ細胞内小器官の一つ。内部に加水分解酵素を持ち、エンドサイトーシスやオートファジー(細胞内の不要小器官の自己消化経路)によって膜内に取り込まれた分子がここで分解される。
 
エクソソーム:
ほとんどの細胞から分泌される直径40-150nm程度の膜小胞。様々なタンパク質や脂質、RNAが含まれる。他の細胞への情報伝達を担う可能性も指摘されている。がんを含む様々な疾患の診断に役立つことが期待されている。
 

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本件に関するお問い合わせ先
新潟大学大学院医歯学総合研究科
機能分子医学講座 特任教授 斎藤亮彦
e-mail:akisaito@med.niigata-u.ac.jp

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平成29年03月09日

No_54 伸びる神経突起先端の動きを超高解像で可視化に成功 −ミクロ世界の自動走行を担う分子機構を解明−

脳ができるとき、または損傷後に神経が再生するときには、神経突起の先端に形成される「成長円錐」が自律的に突起を正しいルートに先導することで正常な神経回路が作られます。本学大学院医歯学総合研究科の五十嵐道弘教授、野住素広講師らの研究グループは、超高解像顕微鏡を使って、神経の先端が伸びるとき、同時に先端から細胞膜を取り込む仕組みを明らかにしました。神経成長に不可欠なこの過程は、神経細胞が細胞体から遠く離れた先端から効率的に情報を取り込むのに利用していると考えられます。
本研究成果は、本学大学院医歯学総合研究科と産業技術総合研究所の共同研究によるもので、Cell Reports(オープンアクセスの電子ジャーナル:インパクトファクター 7.870)に平成29年3月1日(水)午前2時(日本時間)に掲載されました。
 
【本研究成果のポイント】
・神経先端(成長円錐)のこれまで見え難かった細胞内微細構造(アクチン細胞骨格、細胞膜、細胞膜に含まれるタンパク質など)を、超解像顕微鏡を使って鮮明に撮影することに成功した。
・アクチン細胞骨格の伸長とアクチン束形成で神経突起が伸びるとき、同時にその近傍で細胞膜が取り込まれて、輸送小胞が生じることを発見した。それらに関係する分子を明らかにした。
・神経先端(成長円錐)における細胞膜取り込みは神経成長に必要であることから、神経が伸びる際の先端からの情報伝達に関係すると考えられる。
 
Ⅰ.研究の背景
成長円錐は伸長中の神経突起の先端に生じる構造で、細胞外の誘導因子に反応して神経突起を正しい方向へ先導することが知られています。環境に応じて正しい経路を自走する成長円錐は、体内におけるミクロの自動運転車と考えることもできます。脳の発生や神経損傷後の再生に不可欠な成長円錐ですが、1つの分子集合体としてどのように"自動走行"を実現させているかはまだ完全に説明できていません。神経成長を傘が開くことに例えると、傘の骨(細胞骨格)と傘の布(膜)とが、どのように同調して動いていくのか、これまでは全く解りませんでした。
 
Ⅱ.研究の概要
成長円錐が動く仕組みを明らかにするため、私たちの研究グループはこれまでにプロテオミクス解析を行い、成長円錐を構成する部品であるタンパク質を網羅的に同定しました(Nozumiら, 2009)。次にそれらのタンパク質が成長円錐のどこに存在するかを明らかにするため、蛍光タンパク質とつないで細胞に発現させて、蛍光顕微鏡で生きた成長円錐で観察を行いました。その観察を通じて、成長円錐の先端から細胞膜が頻繁に細胞内に取り込まれていることが分かりました。成長円錐の中でも先端部分はアクチン細胞骨格が沢山存在し、骨格の伸長により実質的な神経の伸びを生み出す重要な領域です(図1)。
成長円錐の先端部分におけるアクチン細胞骨格と細胞膜のそれぞれの動きを詳細に観察するため、従来の顕微鏡より分解能が格段に優れている超解像顕微鏡(SIM)を使って撮影を行いました。その結果、アクチン細胞骨格が伸長し、アクチンの束を形成するとき、同時にその近傍で細胞膜の一部が細胞内に取り込まれて輸送小胞が生まれる様子を動画で初めて捉えることに成功しました(図2)。この細胞膜の取込みは、エンドフィリンと呼ばれるタンパク質が集まって引き起こされることが分かりました。アクチンの束形成を人為的に阻害したところ、成長円錐のアクチン束が減るだけに留まらず、成長円錐の先端にエンドフィリンが集まらなくなりました。これらの結果から、神経先端ではアクチン細胞骨格の伸長によって局所的な細胞膜取込みが誘導されていると結論しました。阻害実験を行い、神経成長にエンドフィリンが必要であることも証明しました。超解像顕微鏡による成長円錐構造の3次元再構成の結果、細胞膜取込みの誘因因子として広く知られているクラスリンは成長円錐の底面膜に多いのに対し、エンドフィリンは成長円錐表面の細胞膜に多く集積することが初めて明らかになりました(図3)。これらの結果から、神経が伸びながら先端表面の細胞膜を積極的に取り込むことによって、細胞外環境を探る成長円錐のメカニカルな仕組みが解明できました。
 

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Ⅲ.研究の成果
これまで知られていなかった神経先端での細胞骨格と細胞膜取込みの関係を明らかにしました。アクチン細胞骨格が伸長することにより、近傍で細胞膜の取込みが生じ、作られた輸送小胞はアクチン細胞骨格と一緒に細胞内へと取り込まれます。これは成長円錐が前進しつつ、進行方向から物質を取り込むのに非常に便利な仕組みであると考えられます。
取り込まれる細胞膜にはコレステロールが含まれていることが明らかになりました。コレステロールは細胞膜の一部で脂質ラフトと呼ばれる微小領域を形成し、細胞外から細胞内への分子シグナルを効率的に伝達していると考えられています。今回の観察では、脂質ラフトに集積する膜タンパク質も神経先端から細胞膜と一緒に取り込まれることが分かりました。成長円錐が先端で細胞外の分子を捕らえ細胞内に取り込んで、情報伝達を行うための仕組みと考えることができます。
神経突起の先端に生じる成長円錐は非常に小さく、厚みの薄い構造なので、従来の顕微鏡では平面的にしか見えていませんでした。今回の超解像顕微鏡による解析では、約1マイクロメートル(1ミリメートルの1000分の1)の厚みをもつ成長円錐を3次元的にスライスして再構成することに成功しました。この可視化技術は、これまで観察が難しかった生体試料の微小立体構造の解明に効果的だと考えられます。
 
Ⅳ.今後の展開
今回発見した神経先端からの細胞膜取込みは、成長円錐の機能に重要な役割を果たしている可能性が極めて高いと考えられます。アクチン細胞骨格と協調して生じる細胞膜の取込みと神経成長を促進するシグナル伝達の関係を明らかにすることは、成長円錐が持っている"自動走行"機能の分子機構の解明につながります。また神経成長の分子基盤解明は、損傷神経回路の再生・再建および老化や疾患に対する神経再活性化の方法開発にも大きく寄与することが期待されます。これまで骨格と膜の協調運動がわからず、どのように神経を再生できるかわからなかったものが、今回の研究で解明でき、神経再生への基盤が解明できたと思います。
 
Ⅴ.研究成果の公表
これらの研究成果は、本学大学院医歯学総合研究科と産業技術総合研究所の加藤薫博士との共同研究で得られたもので、平成29年2月28日のCell Reports誌(IMPACT FACTOR 7.870, 5 YEAR IMPACT FACTOR 8.122)に掲載されました。
 
論文タイトル:Coordinated Movement of Vesicles and Actin Bundles during Nerve Growth Revealed by Superresolution Microscopy
 
著者:Motohiro Nozumi¹, Fubito Nakatsu¹,³, Kaoru Katoh⁴, Michihiro Igarashi¹,²
1) Department of Neurochemistry and Molecular Cell Biology, Graduate School of Medical and Dental Sciences
2) Trans-disciplinary Research Program, Niigata University, Chuo-ku, Niigata 951-8510, Japan
3) PRIME, Japan Agency for Medical Research and Development (AMED), Chiyoda-ku, Tokyo 100-0004, Japan
4) Biomedical Research Institute, National Institute of Advanced Industrial Science and Technology (AIST), Tsukuba, Ibaraki 305-8566, Japan
 
野住素広¹、中津史¹,³、加藤薫⁴、五十嵐道弘¹,²
1) 新潟大学大学院医歯学総合研究科神経生化学・分子細胞生物学
2) 新潟大学超域学術院
3) AMED-PRIME
4) 産業技術総合研究所バイオメディカル研究部門
 
doi: http://dx.doi.org/10.1016/j.celrep.2017.02.008
 
<用語集および補足説明>
1)成長円錐
神経突起が伸びるとき、その先端にアメーバ状の運動性の高い構造体が作られます。これを成長円錐(growth cone)と呼びます。成長円錐は貨物列車の機関車のように目的地まで神経突起を牽引すると、標的の細胞に対してシナプスを形成します。私たちの神経細胞の中には1mもの神経突起を伸ばすものも存在し、その成長円錐は自分のサイズの約10万倍の距離を移動することになります。移動ルートは線路のように予めガイド分子(ガイダンス分子)が敷かれている場合もあれば、目的地の細胞や中継地点の細胞からガイダンス分子が放出されることもあります。ガイダンス分子には成長円錐に対して「こっちに来い」の意味をもつ誘因性ものと、逆に「こっちに来るな」という反発性のものがあり、成長円錐はそれぞれのガイダンス分子を受け取りながら正しいルートを選択します。
成長円錐の細胞膜上にはガイダンス分子を受け取るための様々な受容体が存在しています。成長円錐内では受け取ったガイダンス分子に応じて、アクチンなどの細胞骨格を組み立てたり、壊したりすることで、成長円錐の形が変化します。細胞骨格の調節と同時に足場となる接着分子や細胞膜も総合的に変化することで、成長円錐の進行方向、前進または停止を制御していると考えられています。
 
2)超解像顕微鏡
光学顕微鏡は光源に可視光線(波長が約400〜750nm)を用いるため、原理的に200nmの分解能が限界だと考えられてきました。そのため、医学生物学分野では極めて微細な生体構造・分子を見るために、可視光よりも波長が短い電子線を光源とする電子顕微鏡を用いています。しかし、生きた生体試料を観察したり、同時に多種類の分子を可視化するには光学顕微鏡を使うしかありません。最近、光学限界の壁を破る複数の方法が開発されて、100〜20nmの分解能をもつ「超解像顕微鏡」が使えるようになりました。2014年には超解像顕微鏡の開発者3名にノーベル化学賞が贈られるほど、サイエンスの発展に大きな影響を及ぼしています。
本研究で用いたのはその1つである構造化照明顕微鏡(SIM)です。縞模様の照明を用いることで、得られる蛍光像に干渉縞が含まれます。その干渉縞には試料の微細構造の情報が含まれており、計算によって画像に再現することができます。この方法によって、100nm程度の分解能を持つ生体画像が得られます。SIMは生きた細胞が観察可能で、他の超解像顕微鏡に比べて様々な蛍光分子がそのまま使えるのが大きな利点です。
 
3)エンドフィリン
エンドフィリンはBARドメインという特別な構造を持つタンパク質の1つで、2量体を形成することで弓状の構造をとり、曲率を持つ細胞膜に結合します。クラスリン介在性のエンドサイトーシス(細胞膜の取込み)に関与すると考えられてきましたが、クラスリン以外の分子と協調してエンドサイトーシスを誘導するとの報告もあります。
 
 
本件に関するお問い合わせ先
新潟大学大学院医歯学総合研究科
神経生化学分野
五十嵐道弘 教授 e-mail:tarokaja@med.niigata-u.ac.jp
野住素広 講師 e-mail:mnozumi@med.niigata-u.ac.jp

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平成29年03月03日

No_53 英国レスター大学医学部と交流協定調印式を実施しました

2017年2月28日(火)に、英国レスター大学医学部と本学医学部との間で調印式が本学医学部西研究棟4階 部局長応接室にて行われました。本学からは牛木学部長、味岡副学部長、染矢副学部長、西條副学部長、日比野国際交流戦略委員長、佐藤学務委員長、齋藤昭彦国際交流戦略委員(欧米担当)、レスター大学からは、ニコラス・ロンドン学部長が参加しました。
 
本学医学部とレスター大学医学部との間では、昨年度に本学医学部生3名をレスター大学医学部へ派遣し、学生交流が始まりました。今春からは、本学生5名を派遣するとともに、レスター大学の医学部生3名を本学へ受け入れることも既に決定してします。
 
その後の歓談では、終始和やかな雰囲気でお互いの大学の歴史、現状などが話題になりました。今後、益々の活発な学生交流が期待されます。
 

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平成29年01月06日

No_52 薬剤性腎症の発症機序とその予防薬を発見!−腎毒性薬剤が急性腎障害を引き起こす機序を解明するとともに、その予防薬を発見しました−

【本研究成果のポイント】
・感染症やがんの治療に欠かせない抗菌薬や抗がん薬には、重篤な腎障害を引き起こす「腎毒性薬剤」がある。
・そのような副作用のため、十分に原病(感染症やがん)の治療ができないことや、あるいは慢性腎臓病患者などでは、始めからそのような薬の恩恵にあずかれないことがある。
・腎臓に発現するメガリンという分子が、そのような腎毒性薬剤を腎臓に取り込み、腎障害を引き起こす「入り口」となることを明らかにした。
・メガリンが腎毒性薬剤と結合することを阻害し、腎障害の発症を予防するための「メガリン拮抗薬」(シラスタチン)を同定した。
・シラスタチンはこれまで長年、別の目的のために臨床で安全に使用されてきた薬剤である。既に「メガリン拮抗薬」として新たな特許を出願しており、臨床応用に向けて準備を進めている
 
Ⅰ.研究の背景
抗菌薬が効かない細菌、すなわち耐性菌が医療現場で問題となっています。新たな抗菌薬の開発は滞っており、世界保健機関(WHO)や欧米保健当局などは、これまである抗菌薬の有効利用を世界中に呼びかけています。アミノ配糖体、コリスチン、バンコマイシンなどは耐性菌治療の基本薬ですが、副作用の腎障害が問題で、有効な使用の妨げとなっています。抗菌薬以外にも、例えば様々ながんに対する標準治療薬であるシスプラチンも、腎障害のために本来の治療効果が発揮できないことがあります。元々腎臓に障害がある慢性腎臓病患者では、そのような副作用が特に懸念され、がんに対する治療にシスプラチンが使用できないことがあります(図1)。そこで、これらの薬剤の腎毒性の機序を解明するとともに、それを予防する方法の開発が求められていました。
 
Ⅱ.研究の概要
新潟大学大学院医歯学総合研究科機能分子医学寄附講座の斎藤亮彦(さいとう あきひこ)特任教授を中心とする研究グループは、腎臓に存在するメガリンという分子が、これらの腎毒性薬剤を腎臓の細胞に取り込む「入り口」となって腎障害を引き起こす機序と、その機序を抑制する予防薬(メガリン拮抗薬)を明らかにしました。
この「入り口」分子メガリンは腎臓の近位尿細管という部位に発現する受容体タンパク質で、腎臓の他には、肺、脳、内耳、眼などにも発現しています。ちなみにこれらの腎毒性性薬剤は聴力障害をきたすことも知られており、その機序にも内耳のメガリンが関与している可能性があります。
 
Ⅲ.研究の成果
腎臓は約100万個のネフロンという微小構造体が集まってできています。ネフロンでは、糸球体というフィルターを通して、水分を含む血液由来の様々な成分が濾過され、尿細管の中を流れていく過程で尿細管細胞に再吸収されたり、あるいは逆に尿細管細胞から様々な物質が分泌されて、最終的に尿が作られます(図2)。メガリンは近位尿細管細胞に発現し、糸球体から濾過される様々な物質を再吸収する受容体として機能しています(図2)。
 
これまで、腎毒性薬剤のうち、アミノ配糖体、コリスチンはメガリンが腎毒性に関与することが分かっていました。バンコマイシン、シスプラチンについてはメガリンの関与は不明でしたが、アミノ配糖体、バンコマイシン、シスプラチンによる腎障害は、シラスタチンという薬剤で抑制されることが実験的に知られていました(表1)。しかしシラスタチンがそれらの腎毒性薬剤による腎障害を抑制する機序は不明でした。ちなみにシラスタチンは元々腎臓のデヒドロペプチダーゼ-Iの阻害薬として、イミペネムという抗菌薬の腎代謝を阻害する薬剤として開発され、イミペネムとの合剤として、約30年間臨床で安全に使用されてきた薬剤です。
 
斎藤教授らは、水晶発振子マイクロバランス(QCM)法という方法を用いて、メガリンがこれらの腎毒性薬剤やシラスタチンと結合することを明らかにしました。さらに、メガリンと腎毒性薬剤との結合をシラスタチンが阻害することを発見しました(図3)。
続いて、腎臓の約60%の近位尿細管細胞でメガリンの発現を欠失(ノックアウト)したマウスにそれらの腎毒性薬剤を投与したところ、メガリンの発現が欠失されなかった近位尿細管細胞では傷害所見が認められるのに対して、メガリンの発現が欠失された近位尿細管細胞では傷害所見が認められないことを発見しました(図4)。
さらに腎毒性薬剤のひとつであるコリスチンとともに、シラスタチンを同時にマウスに投与すると、コリスチンによる腎障害を抑制できることを明らかにしました(図5)。
 
これらのことから、アミノ配糖体、コリスチン、バンコマイシン、シスプラチンなどの腎毒性薬剤は、すべてメガリンと結合して腎臓内へ取り込まれ、それによって腎障害をきたすこと、さらにシラスタチンによって、それらの腎毒性薬剤とメガリンの結合が阻害されることによって、腎障害を軽減できることが明らかになりました(図6)。
 
斎藤教授らは、既にシラスタチンを「メガリン拮抗薬」として位置づけて特許を出願しています。
 
Ⅳ.今後の展開
3年後を目処に、シラスタチンを用いて、感染症患者やがん患者を対象に、急性腎障害を予防するための医師主導治験を開始するための準備をしています。
 
Ⅴ.研究成果の公表
これらの研究成果は、2017年1月4日付け(アメリカ東部標準時間)のJournal of the American Society of Nephrology(米国腎臓病学会誌)(インパクトファクター: 9.343)のオンライン版に掲載されました。
http://jasn.asnjournals.org/content/early/2017/01/03/ASN.2016060606.abstract
 
論文タイトル:Megalin Blockade with Cilastatin Suppresses Drug-Induced Nephrotoxicity
著者:Yoshihisa Hori, Nobumasa Aoki, Shoji Kuwahara, Michihiro Hosojima, Ryohei Kaseda, Sawako Goto, Tomonori Iida, Shankhajit De, Hideyuki Kabasawa, Reika Kaneko, Hiroyuki Aoki, Yoshinari Tanabe, Hiroshi Kagamu, Ichiei Narita, Toshiaki Kikuchi, Akihiko Saito
doi:10.1681/ASN.2016060606
 

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本件に関するお問い合わせ先
新潟大学大学院医歯学総合研究科
機能分子医学寄附講座 斎藤 亮彦 特任教授
e-mail:akisaito@med.niigata-u.ac.jp

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平成29年01月06日

No_51 「肝臓オートファジーの役割とその異常と肝疾患」に関する包括的な総説を発表

英国科学誌「Nature Review Gastroenterology & Hepatology」(Impact factor: 14.435)オンライン版に、新潟大学大学院医歯学総合研究科分子遺伝学の小松雅明教授と順天堂大学医学部 上野隆客員教授が「肝臓オートファジーの役割とその異常と肝疾患」に関する包括的な総説を発表しました。
 
http://www.nature.com/nrgastro/journal/vaop/ncurrent/full/nrgastro.2016.185.html
doi:10.1038/nrgastro.2016.185
 
オートファジーは細胞内の分解小器官であるリソソームにおいて細胞質成分を分解する機構と定義されています。本年度のノーベル生理学・医学賞は「オートファジーの分子メカニズムの解明」で大隅良典栄誉教授(東工大)に授与されたことからもわかるように、オートファジーの生体における重要性が明らかになってきました。
 
本総説では、
1. 1960年代のラット肝臓を用いたオートファジーの発見
2. ラット肝臓を用いた初期オートファジー研究がもたらした知見
3. 大隅博士らによるオートファジー関連遺伝子群ATGsの同定によるブレイクスルー
4. 糖新生、β酸化といった基本的な肝代謝におけるオートファジーの役割
5. 様々な転写因子による肝臓オートファジーの時空間的制御機構
6. 肝オートファジーの異常と非アルコール性脂肪性肝疾患や肝細胞がん発症
等から構成されており、オートファジーの歴史に加えて、最新の肝臓オートファジーの生理的役割、そしてヒト疾患との関わりを解説しています。
 
 
研究内容に関する問合せ先
新潟大学大学院医歯学総合研究科 分子遺伝学分野
小松雅明 教授
e-mail:komatsu-ms@med.niigata-u.ac.jp

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平成28年12月15日

No_50 -造血幹細胞の生存と維持のメカニズムを解明- 造血幹細胞の細胞死を抑制する脱ユビキチン化酵素を同定

新潟大学大学院医歯学総合研究科・ウイルス学教室の樋口雅也准教授、藤井雅寛教授、川村宏樹客員研究員らは、造血幹細胞の細胞死を抑制する分子として脱ユビキチン化酵素USP10を同定しました。USP10を欠損したマウスでは、造血幹細胞の数が著しく減少し、造血不全を発症しました。
研究成果は、2016年12月13日(英国時間)のStem Cell Reports誌(IMPACT FACTOR 7.023)に掲載されました。
論文タイトル:USP10 Is an Essential Deubiquitinase for Hematopoiesis and Inhibits Apoptosis of Long-Term Hematopoietic Stem Cells
 
【本研究成果のポイント】
・造血幹細胞の生存維持に必須の遺伝子として脱ユビキチン化酵素USP10を同定した。
・USP10を欠損したマウスでは、造血幹細胞が著減し、造血不全を発症した。
・USP10は脱ユビキチン化酵素として、stem cell factorによる造血幹細胞の細胞死抑制を制御した。
・造血幹細胞の細胞死制御と生存維持に関する新しい分子機構を解明した。
 
Ⅰ.研究の背景
造血幹細胞は、すべての血球系細胞に分化可能な幹細胞であり、すべての血球系細胞の生存と維持に必須の役割を果たしています。造血幹細胞の生存維持に必須のサイトカインとしてstem cell factor(SCF)が知られています。SCFは造血幹細胞の自己複製、細胞死および多分化能の維持などを制御しています。しかしながら、SCFが造血幹細胞の細胞死をどのように制御するのかについては不明な点がありました。
 
Ⅱ.研究の概要
私たちは、造血幹細胞の細胞死を抑制する分子として、脱ユビキチン化酵素USP10を同定しました。USP10を欠損したマウスでは、造血幹細胞の数が著しく減少し、重度の貧血を伴う造血不全を発症しました。この際、USP10は造血幹細胞特異的に細胞死を抑制していました。
 
Ⅲ.研究の成果
造血幹細胞は、すべての血球系細胞の生存維持に必須の役割を果たしており、血球系細胞が関与する様々な生体内機能を制御しています。造血幹細胞の生存維持に必須なサイトカインとしてstem cell factor(SCF)が知られています。SCFは造血幹細胞の自己複製、細胞死および多分化能の維持などを制御しています。私たちは、造血幹細胞の細胞死を抑制する分子として脱ユビキチン化酵素USP10を同定しました。USP10を欠損したマウスを樹立したところ、造血幹細胞の数が著しく減少し、造血不全を発症しました(図1、2)。USP10欠損マウスでは、造血幹細胞の細胞死が昂進していました。USP10を欠損した造血幹細胞を、SCFを含まない培養液中で培養すると、細胞死が誘導されました。この細胞死は野生型USP10では抑制されましたが、脱ユビキチン化酵素活性を欠損したUSP10では抑制できませんでした。これらの結果は、USP10が造血幹細胞の細胞死を特異的に抑制する脱ユビキチン化酵素であり、造血幹細胞の維持に関わることを示しています(図3)。
 
Ⅳ.今後の展開
造血幹細胞の異常は、造血不全症候群、免疫不全症および白血病などの疾患を発症させます。また、その一部については原因が特定されていません。今後これらの疾患に、USP10がどのように関与するのかを解析する予定です。また、USP10による細胞死の分子機構を標的とした治療薬についても研究を進めていく予定です。
 

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Ⅴ.研究成果の公表
これらの研究成果は、平成28年12月13日のStem Cell Reports誌(IMPACT FACTOR 7.023)に掲載されました。
論文タイトル:USP10 Is an Essential Deubiquitinase for Hematopoiesis and Inhibits Apoptosis of Long-Term Hematopoietic Stem Cells
 
著者:Masaya Higuchi¹, Hiroki Kawamura², Hideaki Matsuki¹, Toshifumi Hara¹, Masahiko Takahashi¹, Suguru Saito¹, Kousuke Saito¹, Shuying Jiang³,⁴, Makoto Naito³, Hiroshi Kiyonari⁵, and Masahiro Fujii¹
 
¹Division of Virology, Niigata University Graduate School of Medical and Dental Sciences, Niigata 951-8510, Japan.
²Department of Clinical Engineering and Medical Technology, Faculty of Medical Technology, Niigata University of Health and Welfare, Niigata 950-3198, Japan.
³Division of Pathology, Niigata University Graduate School of Medical and Dental Sciences, Niigata 951-8510, Japan.
⁴Niigata College of Medical Technology, Niigata 950-2076, Japan.
⁵Animal Resource Development Unit and Genetic Engineering Team, RIKEN Center for Life Science Technologies, Kobe 650-0047, Japan.
 
 
本件に関するお問い合わせ先
新潟大学大学院医歯学総合研究科
教授 藤井雅寛
e-mail:fujiimas@med.niigata-u.ac.jp

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平成28年12月06日

No_49 若年糖尿病の恐ろしさがビッグデータ解析から明らかに -30代糖尿病男性の虚血性心疾患リスクは、同年代の血糖正常男性の約20倍(加齢20年分に匹敵)

新潟大学大学院医歯学総合研究科血液・内分泌・代謝内科の曽根博仁教授、健康寿命延伸・生活習慣病予防治療医学講座の藤原和哉特任准教授らは、勤労世代において、糖尿病は、狭心症や心筋梗塞といった冠動脈疾患の発症に強く影響し、中でも30代の若い世代においてその影響がより大きく、それは20年分の加齢に相当することを明らかにしました。
 
研究成果は、2016年10月4 日、フランスの医学誌Diabetes & Metabolism 誌にオンライン掲載されました。
 
【本研究成果のポイント】
・30代の糖尿病は、50代の前糖尿病(糖尿病予備軍)と同程度に冠動脈疾患を発症
・30代では、前糖尿病(糖尿病予備軍)の段階から冠動脈疾患の発症が増加
・30代、40代の糖尿病は、50代の正常耐糖能以上に冠動脈疾患を発症
 
研究の背景と概要
心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患は、男性において女性の約2倍起きやすく、特に中年前後における「働き盛りの突然死」の主な原因として、以前から深刻な問題になっています。一方、糖尿病の大部分を占め、中年以降に多く見られる2型糖尿病の若年化も問題になっており、現在、働き盛り世代(30代〜50代)男性の約8人に1人が糖尿病あるいはその予備軍です(それぞれ6.3%、6.1%)。糖尿病患者は平均的に、血糖正常者の2-4倍虚血性心疾患になりやすいことが知られています。しかし、若年糖尿病については、その悪影響の程度が必ずしも明らかではありませんでした。
新潟大学医学部内科の藤原和哉准教授、曽根博仁教授らが、この世代の男性の診療報酬請求(レセプト)データと健診データとを突き合わせて解析したところ、40代・50代の糖尿病患者では、同年代の血糖正常者と比較し、従来の定説通り約2.5倍(40代2.74倍、50代2.47倍)虚血性心疾患を起こしやすかったのに対し、30代の糖尿病男性では、同年代の血糖正常男性の20倍近く(18.2倍)虚血性心疾患を発症しやすく、そのリスクは血糖正常の50歳代男性に匹敵することが判明しました(=加齢20歳分のリスク上昇)。また30代男性では、いわゆる糖尿病予備軍でも、血糖正常男性の約3倍、虚血性心疾患を発症しやすいことがわかりました。
これらの成果は、国際専門誌(Diabetes & Metabolism)に掲載されました。
 
研究方法と結果の詳細
健康保険レセプトデータベースの分析より、2008年から2012年に健診を受けた、過去に心疾患歴のない31-60歳の男性111621名を抽出し、カテーテル治療やバイパス手術などを要した重症虚血性心疾患の発症を検討しました。さらに高血圧、高LDL(悪玉)コレステロール血症、低HDL(善玉)コレステロール血症、喫煙、肥満などの、既知の虚血性心疾患のリスク因子の影響を除いて(補正して)、血糖正常者と比較して、糖尿病予備軍、糖尿病患者が、どの程度虚血性心疾患を発症しやすいかを年代別に(30代、40代、50代)検討しました。
その結果、追跡期間(中央値)4.1年に436人が冠動脈疾患を発症し、糖尿病患者と血糖正常者を比較すると、40代・50代では、これまでの定説通り両者の差は約2.5倍(40代2.74倍、50代2.47倍)であったのに対し、30代では両者の差は18.2倍と非常に大きく、30歳代の糖尿病男性は、同年代の血糖正常者と比較して約20倍も虚血性心疾患を発症しやすいことが判明しました。その絶対リスクは、50代の血糖正常男性に相当し、糖尿病のリスクは加齢20年分に相当することが判明しました。
また30代男性では、糖尿病のみならず「予備軍」の人においても、同年代の血糖正常者と比較すると2.9倍虚血性心疾患を発症しやすく、40代、50代と比べて、「予備軍」であることの悪影響が強く出ることがわかりました。
さらに40代、50代男性は血糖正常でも、30代と比較すると、それぞれ約10倍、約20倍虚血性心疾患を発症しやすかったのですが、40代、50代男性が糖尿病になると、30代の血糖正常男性の、それぞれ約25倍、50倍も虚血性心疾患を起こしやすいことが判明しました。
糖尿病とその「予備軍」の虚血性心疾患発症に及ぼす悪影響を、年代別に詳細に検討した今回の結果から、特に若年世代における「予備軍」を含む糖尿病の悪影響の大きさが明らかにされました。
 
結果の解釈
今回の研究結果から、30代男性では、糖尿病はこれまで考えられていたより大幅に高い20倍近くも虚血性心疾患リスクを高め、そのリスクは加齢換算で20歳分に相当しました。さらにこの年代男性では、予備軍でも虚血性心疾患リスクが3倍に高まることが明らかになりました。したがって若いからといって安心してよいわけでなく、糖尿病や予備軍など血糖値に異常がある人は、若いうちから、早めに生活習慣改善などの糖尿病治療に取り組むことが重要であることを示しています。(なお女性については、元々男性より虚血性心疾患発症率が低いので、今回のようなビッグデータでも解析にはまだ不十分で、今後さらなるデータの蓄積が必要です)
 
今回の研究の特長(手法の強み)
レセプトデータベースを利用したこれまでの研究の多くは、請求に使われた病名(保険病名)を利用していましたが、現実には、検査の必要上などから、確実な診断がつく前に病名を付けたり、実施した検査とつじつまを合わせるために疑い例や軽症例でも病名を付けたりすることがよくあり、真の疾患発症を正確に把握することは困難でした。
今回は保険病名に頼らず、診療内容を精査することにより、実際に確定診断がついた重症患者にのみ行われる治療処置(心臓カテーテル治療、心臓バイパス手術)を補足することで、心筋梗塞や狭心症など虚血性心疾患の確実な発症者を、全例漏れなく(=レセプトデータの強み)正確に特定することができました。
 
研究成果の公表
本研究成果は、2016年10月,フランスの学術誌「Diabetes & Metabolism」(IF:4.693)に掲載されました。
論文タイトル:Impact of glucose tolerance status on the development of coronary artery disease among working-age men
著者:Fujihara K, Igarashi R, Yamamoto M, Ishizawa M, Matsubayasi Y, Matsunaga S, Kato K, Ito C, Koishi M, Yamanaka N, Kodama S, Sone H.
https:// www.ncbi.nlm.nih.gov/ pubmed/ 27712966
doi: 10.1016/j.diabet.2016.09.001. [Epub ahead of print]
 

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本件に関するお問い合わせ先
新潟大学医学部 藤原和哉 特任准教授
e-mail:kafujihara-dm@umin.ac.jp

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平成28年12月01日

No_48 ミトコンドリアオートファジーの真の姿を発見! オートファジーは大きなミトコンドリアに直接かぶりつく

新潟大学大学院医歯学総合研究科機能制御学分野の山下俊一助教、神吉智丈教授らは、オートファジーが大きなミトコンドリアの一部分を直接引きちぎりながら分解していることを発見しました。これまで、大きなパンを一旦小さくちぎってから口に運ぶように、大きなミトコンドリアも小さく分裂してからオートファジーで分解されていると信じられていました。本研究は、オートファジーがミトコンドリアを分解する既存のモデルをくつがえすだけでなく、オートファジーが大きな物体を分解するときの新たなモデルを提唱することになります。
 
【本研究成果のポイント】
・ミトコンドリアオートファジー時に、どのようにしてミトコンドリアがオートファゴソームによって包み込まれるかは不明であった。
・大きなミトコンドリアが小さく分裂するために必須な因子である Dynamin-related protein 1 はミトコンドリアオートファジーには不要であった。
・ミトコンドリアオートファジー時には、大きなミトコンドリアの一部位が直接隔離膜によって認識され、その部分だけがオートファゴソームに包み込まれながら分裂することが明らかとなった。
・このミトコンドリアの形態的特徴はオートファゴソーム形成因子に依存することから、オートファゴソームが直接ミトコンドリアをちぎっている可能性がある。
 
Ⅰ.研究の背景
ミトコンドリアは、細胞が必要とするエネルギーの大半を産生する細胞内小器官で、生命活動を行う上で非常に重要な役割を果たしています。細胞内には様々な大きさのミトコンドリアがあり、ミトコンドリアが分裂すれば小さく、融合すれば大きくなります。オートファジーがミトコンドリアを分解する場合、これまでは、分裂により生じた小さなミトコンドリアが分解されていると考えられていました。しかしながら、このミトコンドリア分解過程を経時的に観察した報告はほとんどありませんでした。
 
Ⅱ.研究の概要
本研究では、まずミトコンドリア分裂に必須なDynamin-related protein 1(Drp1)がミトコンドリアオートファジーに必要かどうか検討し、ミトコンドリア分裂が起こらないDrp1欠損細胞でもミトコンドリアオートファジーが効率よく起こっていることを明らかにしました。次に、どのようにしてミトコンドリアがオートファジーによって分解されているかを知るために、経時的にミトコンドリアオートファジーを追跡する実験系を樹立しました。この解析の結果、ミトコンドリアオートファジーでは、大きなミトコンドリアの一部分が、オートファジーによって直接ちぎり取られて、分解されていることを明らかにしました。
 
Ⅲ.研究の成果
我々は、ミトコンドリアがどのようにしてオートファジーによって分解されているのかを知るために、経時的にミトコンドリアの分解過程を追跡する実験系の樹立し解析しました。従来のモデルでは、一旦大きなミトコンドリアが小さく分裂してから、分解へ向かうと信じられてきました。しかし、ミトコンドリア分裂に必須な因子Drp1を欠損した細胞でもミトコンドリア分解が見られることなどから、多くの矛盾が生じました。そこで、我々はミトコンドリアオートファジーの過程を生きた細胞の中で追跡し、何が起きているのかを詳細に解析しました。その結果、ミトコンドリアオートファジーの過程では、大きなミトコンドリアの一部分が隔離膜によってちぎり取られ、分解されることを世界で初めて明らかにしました(参考図1)。これにより、従来のモデルとは異なる、新しいミトコンドリアオートファジーのモデルを提唱しました(参考図2)。さらにこの現象は、ミトコンドリアの分裂必須因子には依存せず、隔離膜の形成因子に依存することから、隔離膜が閉じる力がミトコンドリアの分裂に寄与している可能性を示すことができました。このことは、オートファジーがオートファゴソームより大きな物体を分解するときの一般化できる新しいモデルとなる可能性があります。
 
Ⅳ.今後の展開
今後は、今回提唱したオートファジーによるミトコンドリア隔離・分解過程について、その分子メカニズムの全貌解明を目指します。また、ミトコンドリアオートファジーがパーキンソン病などの神経変性疾患と関わりがあることが近年明らかになってきており、こうした疾患の病態解明に結びつくように、分子レベルでの解明を進めていきます。
 
Ⅴ.研究成果の公表
これらの研究成果は、九州大学大学院医学研究院の三原勝芳名誉教授と大寺秀典助教、京都大学大学院農学研究科の阪井康能教授、大阪大学大学院医学系研究科の吉森保教授と浜崎万穂准教授らとの共同研究で得られたもので、平成28年11月30日(水)午後11時(米国東部時間平成28年11月30日(水)午前9時)の Journal of Cell Biology 誌(IMPACT FACTOR 8.717, 5 YEAR IMPACT FACTOR 9.886)に掲載されます。
 
論文タイトル:Mitochondrial division occurs concurrently with autophagosome formation but independently of Drp1 during mitophagy
著者:Shun-ichi Yamashita¹, Xiulian Jin¹, Kentaro Furukawa¹, Maho Hamasaki², Akiko Nezu², Hidenori Otera³, Tetsu Saigusa¹, Tamotsu Yoshimori², Yasuyoshi Sakai⁴, Katsuyoshi Mihara³, Tomotake Kanki¹*
doi: 10.1083/jcb.201605093
 
専門用語の説明
オートファジー、隔離膜、オートファゴソーム:
細胞内のタンパク質やミトコンドリアなどを隔離膜と呼ばれる二重膜で包み込み、種々の分解酵素を多く含むリソソームと融合することで、包み込んだ成分を分解する機構。隔離膜が伸長し、細胞内の成分を完全に包み込んだ状態になるとオートファゴソームと呼ばれるようになる。
 

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Dynamin-related protein 1 (Drp1):
ミトコンドリアの分裂に必須なタンパク質で、分裂時にミトコンドリア外膜に集まり、その部分での分裂を引き起こす。Drp1 を欠損した細胞では、ミトコンドリアの分裂ができなくなり、長くつながった大きなミトコンドリアが細胞内に見られるようになる。
 

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本件に関するお問い合わせ先
新潟大学大学院医歯学総合研究科
教授 神吉智丈(かんきともたけ)
e-mail:kanki@med.niigata-u.ac.jp

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